2014年4月2日水曜日

鉄棒と僕と桜


Y少年は、小さい頃から運動神経に少々偏りがあった。

球技や、単純にパワーを必要とする競技などはまずまずだったが、
かけっこ、一輪車、幅跳び、竹馬、跳び箱、マット運動、縄跳びなどの自分の体を動かす運動はことごとく苦手で、毎回体育の時間、自分が嫌になっていたことを覚えている。

その最も苦手だったのが「鉄棒」。
前回り以外、何も出来なかったことをよく覚えている。




それから約15年。
先日Y少年は夜桜を見に、東京は早稲田、神田川の並木道を歩いていた。

30分程経ったころだろうか。
左手側に公園が。

。。
。。。


いる。

やつだ。!!!
僕の少年時代の心をことごとく折ってきた忌わしき鉄棒。!!!!!!

?

??

あれ?なんだろう。
昔より嫌な感じがしない。

僕はなぜか、今ならできる気がした。
小学生のときに何度も挑戦したあの大技。

そう。「逆上がり」だ。


全く以て理屈が分からなかった技だ。
どうやったら後ろ向きに回れるのか、検討もつかなかった。

その大技が、少年は今なら出来るような気がした!!

少年は両手をぎゅっと握りしめて地面を思いっきり蹴った。
肘は曲げた方が良いような気がしたので、上腕二頭筋にぐっと力を入れた。
そしたら世界が急にぐるっと逆回転に回り、蹴り出した位置に着地した。

一瞬何が起きたのか分からなかったが、数秒して確信した。

彼は生まれて初めて逆上がりが出来た。

花見をしている人が笑っているのも分かったが、全く気にならなかった。
27歳の大の男が、両手を広げて喜びを全身で表した。
大きな声で、歓喜の声を上げた。

そのあとはお酒がよく進んだ。久しぶりに、日本酒なんかも飲んだ。
おいしかったなぁ。


そして数時間後に彼は気付く。


そこに財布を落としたことに。


Artrandom
各務




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